- 鼠径ヘルニアの手術の特長
- 鼠経ヘルニアとは
- これってもしかして鼠経ヘルニア?(初期症状)
- 鼠経ヘルニアを放置するとどうなる?
- 鼠径ヘルニアの検査・診断
- 鼠経ヘルニアの治療
- 鼠経ヘルニアの手術後の注意点
- 鼠経ヘルニアの日帰り手術の費用
鼠径ヘルニアの手術の特長
手術経験豊富な院長と麻酔科医の連携
院長はこれまでに総手術数1000件以上の手術を担当しており、確かな経験に基づいた安全な治療を提供しています。また、麻酔科医も専門医が担当しており、全身麻酔は神経ブロック注射と組み合わせることで術中の痛みをしっかり抑え、手術後の回復をスムーズにします。
傷が小さく痛みも少ない(低侵襲)
腹腔鏡手術
当院では腹腔鏡を用いた手術を行っております。通常の腹腔鏡の創部は臍12mm、右側腹部5mm、左側腹部5mm程の傷で手術を行います。症例によってはさらに小さくすることも可能で、臍5mm、右側腹部5mm、左側腹部3mmほどと、ごく小さな切開で治療が可能です。傷が小さいため体への負担が大幅に軽減されます。また、切開が最小限で済むため、術後の痛みが少ないのも特長です。日常生活への復帰も早くなります。
入院不要・日帰りでの手術が可能
鼠経ヘルニアの手術は日帰りで対応できるため、入院費用がかからず、生活や仕事への影響も最小限に抑えられます。また、健康保険が適用されるほか、高額療養費制度の利用も可能なため、費用面の負担をできるだけ抑えることができます。費用について不安のある方は、事前の診察時にお気軽にご相談ください。
鼠経ヘルニアとは

鼠経(そけい)ヘルニアは、いわゆる「脱腸」として知られる疾患で、腹壁の隙間から腸の一部や脂肪組織が皮膚の下へ突出する状態を指します。特に、足の付け根(鼠径部)にふくらみが生じるのが特徴で、多くの場合、違和感や軽い不快感を伴います。
成人の鼠経ヘルニアは、加齢や長年の負荷によって腹壁の筋肉や組織が弱くなることが主な原因とされており、特に男性に多く見られます。
ただし、女性でも発症することがあり、以下のような方は注意が必要です。
- 重い物を持ち上げる機会が多い
- 便秘がちで、いきむことが多い
- 慢性的な咳や前立腺肥大により腹圧がかかる
また、先天的に腹膜の構造に異常がある場合も発症要因となります。いずれにしても、自然に治ることはなく、放置すれば徐々に進行するため、早期の受診が重要です。
これってもしかして鼠経ヘルニア?
以下のような症状がみられる場合は、鼠経ヘルニアの可能性があります。
- 足の付け根に柔らかいふくらみがある
- 立ったり力んだりするとふくらみ、横になると消える
- 足の付け根に時より痛みもある
こうしたふくらみは、最初は痛みを伴わず、軽い違和感だけで気づかれることもあります。しかし、時間の経過とともにふくらみが頻繁に見られたり、サイズが大きくなっていき、痛みを伴うことがあります。特に、立ち仕事や長時間の活動後、咳やくしゃみの際に重だるさを感じるようになった場合は注意が必要です。また、衣服のウエスト部分が当たると不快感が強まることもあります。
鼠経ヘルニアを放置すると、腸が脱出したまま戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という緊急事態に至ることがあります。嵌頓は、激しい腹痛や吐き気、お腹の張りなどの深刻な症状があらわれます。腸がはまりこんで首を絞められたのと同じ状況であり、緊急事態となります。
軽度であっても、自己判断で様子を見るのではなく、医療機関への早めにご相談ください。
その他の腹部のヘルニアについて
大腿ヘルニア
大腿ヘルニアは、足の付け根のさらに下、大腿部の内側から腸が飛び出すタイプのヘルニアです。出産経験のあるご高齢の女性に多く見られます。
鼠経ヘルニアと比べるとふくらみが小さく、目立たないこともあるため、見た目だけでは判断が難しい場合があります。多くは鼠径靱帯の下を触診することで確認されます。なお、大腿ヘルニアは嵌頓のリスクが特に高いため、診断がついた段階で手術を行うことが原則とされています。
閉鎖孔ヘルニア
閉鎖孔ヘルニアは、骨盤の奥深くにある「閉鎖孔」と呼ばれる小さな開口部から腸が脱出するタイプのヘルニアで、非常にまれな疾患です。ご高齢で痩せ型の女性に比較的多く、外見ではふくらみが確認できないことがほとんどのため、診断が難しいとされています。
症状としては、腸閉塞に似た腹痛や吐き気があり、CT検査などの画像診断でようやく発見されるケースが多いです。手術歴のないご高齢の女性で、腸閉塞の症状がある場合には、閉鎖孔ヘルニアの可能性も念頭に置く必要があります。治療には外科手術が必要で、腹腔内に脱出した腸を戻し、ヘルニア門を閉じる処置が行われます。
鼠経ヘルニアを放置するとどうなる?
鼠径ヘルニアは自然に治癒することはなく、放置している間に少しずつ進行していきます。初期には、ふくらみの大きさが日によって変化し、押すと元に戻ったり、横になると戻ることもあります。しかし、時間の経過とともに腹壁の筋膜の緩みが進み、常に腸が脱出したままの状態になることがあります。
特に、注意が必要なのは「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる緊急事態です。飛び出した腸が狭い筋膜の間に締め付けられ戻らなくなると、血流が途絶え、激しい腹痛や吐き気、発熱が生じ、命に関わる状態へと進行します。また歩いたときの違和感や痛みで生活の質が落ちたり、ふくらみが外見上のコンプレックスとなり、精神的なストレスにつながることもあります。
万が一、嵌頓になったら?
嵌頓になり、解消されないまま時間が経過すると、腸の血流が完全に途絶え(虚血)ます。その状態が約8時間を超えると腸の組織が死亡(壊死)に至る可能性が高くなります。腸が壊死すれば腹膜炎を発症し、緊急手術以外に救命手段はありません。
その場合はお腹を大きく開く開腹手術が必要となります。腸管切除術が必要になり、腸をつなぎなおすため合併症リスクも高くなります。場合によっては人工肛門(ストーマ)になります。術後はICUで集中的な管理を必要とし入院期間も長期化します。
場合によっては腸に穴が空いたり、腸閉塞になり敗血症という致死的な状況に陥り、最悪のケースは救命も難しくなる可能性もあります。症状が軽いうちに受診すれば、最小限の負担で治療できるため、早期の対応が何より重要です。
鼠径ヘルニアの検査・診断
鼠径ヘルニアは、足の付け根に生じるふくらみやしこりを視診・触診で確認することが診断の第一歩となります。多くの症例では、この段階でヘルニアの存在がある程度、判断できます。必要に応じて超音波検査を行い、脱出している組織の状態や進行度をより正確に評価します。
鼠経ヘルニアの治療・日帰り手術
鼠径ヘルニアを根本的に治すには、弱くなった腹壁を外科的に補強する手術が唯一の方法です。お薬や運動では改善しないため、診断がついた段階で手術治療が検討されます。
手術方法には、腹腔鏡を使って修復する方法と、足の付け根を数センチだけ切開する従来法があります。社会復帰を急ぐ方には腹腔鏡手術が向いており、術後の痛みが少なく、回復も比較的早いという利点があります。
腹腔鏡手術について(TAPP法)
TAPP法は腹腔内から鼠径部を観察する腹腔鏡下手術で、ヘルニアの状態を直接確認できる点が大きな特長です。腹膜ごと飛び出している部分をヘルニア門で切離し、腹壁から丁寧に剥離していきます。そこにメッシュを敷いて、場合によっては数箇所固定し、最後に腹膜を縫合してメッシュが腹腔内へ飛び出さないように処理します。
より傷を小さく
通常の腹腔鏡の創部は臍12mm、右側腹部5mm、左側腹部5mm程の傷で手術を行います。症例によってはさらに小さくすることも可能で、臍5mm、右側腹部5mm、左側腹部3mmほどと、ごく小さな切開で治療が可能です。傷が小さいため体への負担が大幅に軽減されます。また、切開が最小限で済むため、術後の痛みが少ないのも特長です。日常生活への復帰も早くなります。
この方法では、外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアといったヘルニアが起こりやすい領域を一度に確認でき、術後の再発リスクを下げるという利点もあります。1つのメッシュで広範囲を補強できる点もTAPP法のメリットです。
「少しふくらんでいる気がするけど、病院へ行くほどではないかもしれない…」と感じて受診を後回しにされる方は少なくありません。しかし、鼠径ヘルニアは放っておいても改善しない進行性の病気です。違和感の段階で診断・治療を行うことが、最も安全で、患者様の負担も少なくなります。まずは相談だけでもお気軽にお問合せください。
鼠径切開法について(前方アプローチ)
手術方法の選択について
(前方アプローチへの変更の可能性)
当院では、傷が小さく痛みの少ない「腹腔鏡手術(TAPP法)」を第一選択としていますが、全ての患者様にこの方法が適しているわけではありません。
患者様の安全を最優先に考え、以下のようなケースでは、鼠径部を3〜4cmほど切開して行う「鼠径部切開法(前方アプローチ)」を選択、あるいは手術中に切り替える判断をいたします。
1. 最初から「鼠径部切開法」をお勧めする場合
- 過去に下腹部の手術を受けたことがある方(癒着により、腹腔鏡での操作が難しい場合があります。)
- 全身麻酔が難しい方(重篤な心疾患や呼吸器疾患をお持ちの方など、全身麻酔のリスクが高い場合は、局所麻酔や脊椎麻酔で行える切開法が安全です。)
- 抗凝固剤(血液サラサラの薬)を服用中の方(出血のリスクを考慮し、止血操作が確実な切開法を選択することがあります。)
2. 手術中に「腹腔鏡」から
「切開法」へ変更する場合
手術開始後、腹腔内の癒着が予想以上に強い場合や、出血などで視野が確保できない場合など、腹腔鏡での継続が危険であると判断した際には、躊躇なく安全な切開法へ変更(コンバージョン)いたします。これは手術の失敗ではなく、患者様の安全を確保するための医学的に正しい判断ですので、あらかじめご了承ください。
※鼠径部切開法となった場合でも、適切な麻酔管理を行い、日帰りでの手術が可能です。
鼠経ヘルニアの手術後の注意点
鼠径ヘルニアの日帰り手術後は、体に負担のかかる行動に関しては、「2週間ほど」注意が必要です。手術当日は安静を保ち、運転や入浴、アルコールは控えてください。翌日から軽い仕事や散歩は可能ですが、お腹に力のかかる動作や重い物を持つことは避けましょう。手術後1週間〜2週間で痛みや違和感は和らぎますが、激しい運動や筋トレは控え、2週間以降に徐々に再開してください。
術後は痛み、内出血、しこりや腫れが出ることがありますが、多くは一時的で自然に改善します。再発や感染、漿液腫などのリスクは低いですが、気になる症状があれば早めに受診してください。当院では手術後も経過を確認し、安全に日常生活へ戻れるようサポートいたします。
鼠経ヘルニアの日帰り手術の費用
鼠径ヘルニアの手術は保険が適用されるため、施設間で大きな差はありません。ただし、負担割合や手術方法、麻酔方法によって患者様ごとに費用は異なります。あくまで目安として参考にしてください。
| 1割負担 | 3割負担 | |
|---|---|---|
| 術前診察・検査 | 約2,000円 | 約6,000円 |
| 腹腔鏡下ヘルニア修復術 | 約18,000円 | 約120,000円 |
| 鼠径部切開法 | 約18,000円 | 約50,000円 |