TOP

臍ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア Umbilical Hernia

大人の臍ヘルニア(でべそ)とは

おへそは元々、へその緒(さいたい)がつながっていた部分で、筋肉層が存在せず、腹壁の中でも特に構造的に弱い箇所です。このため、肥満や妊娠、腹水(腹腔内に液体が溜まる状態)、慢性的な咳などで腹圧が持続的に高まると、臓器の一部が腹壁を通って突出する「臍ヘルニア(さいヘルニア)」が発生することがあります。

臍ヘルニアを放置するとどうなる?

受診のきっかけとして多いのは、おへそのふくらみや軽い痛みです。初期の段階では強い痛みを伴わないことが多いものの、腸などの臓器が脱出したまま戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を起こすと、突然激しい痛みに襲われ、緊急手術が必要になるケースもあります。

おへそのふくらみは次第に大きくなり、違和感や痛み、吐き気などの症状を伴うようになることがあります。嵌頓が生じると、脱出した臓器の血流が途絶えて壊死に至る可能性があり、命に関わる状況へと進展しかねません。実際、成人の臍ヘルニアは小児と比べておよそ14倍も嵌頓を起こしやすいとされており、放置は極めて危険です。そのため、原則として手術による治療が推奨されています。

臍ヘルニアの検査

診断は問診と視診・触診に加え、超音波検査で比較的容易に行うことができます。手術を検討する際には、より詳細な状態を把握するためにCT検査が必要となる場合があります。その際は、CTを完備している医療機関を紹介いたします。

臍ヘルニアの治し方

成人における臍ヘルニアは比較的まれな疾患ですが、自然治癒が期待できる小児の臍ヘルニアとは異なり、成人では基本的に自然には治りません。特に、問題となるのは、脱出した腸などが元に戻らなくなり、激しい痛みを伴う「嵌頓(かんとん)」のリスクが高い点です。そのため、成人の臍ヘルニアは原則として全て手術による治療が適応となります。

当院では、患者様の状態を詳細に把握した上で、以下のいずれかの手術法を選択しています。

  1. 静脈麻酔を用いた皮膚切開とメッシュの挿入
  2. 全身麻酔+腹腔鏡手術+皮膚切開+メッシュ挿入

いずれの手術も、経過が良好であれば手術終了後およそ30分程度で歩行が可能となり、特に問題がなければ手術後2時間程度でご帰宅いただけます。基本的には、ご自宅での特別な処置は必要なく、傷口は防水性の保護テープで覆います。テープ内部にわずかな出血がみられる場合もありますが、通常は心配ありません。(おへその形やサイズ、術式によっては、一時的に綿球をあてて圧迫したり、おへそを覆うようにガーゼで保護するといったケアが必要になることもあります。)

日常生活の注意点

手術後の回復期においては、腹圧が強くかかるような動作や運動、特に腹筋運動は2週間ほど控えてください。一方で、ウォーキングなど腹部に負担がかからない軽い運動であれば、術後1週間を目安に再開可能です。ただし、再開の際は体調を見ながら無理のない範囲で行うようにしましょう。また、臍突出症のみでヘルニアがない場合は、運動制限はほとんど必要ありません。

腹壁瘢痕ヘルニアとは

鼠経ヘルニアとは

腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアは、開腹手術を受けた後に生じることのある合併症の1つで、術後10年以内に約1割の方に発症するとされています。開腹手術では、術後に皮膚や皮下組織、筋膜、腹膜といった層を順に縫合して閉じますが、何らかの理由で傷の治りが不十分な場合、筋膜に隙間ができることがあります。この隙間(医学的には「ヘルニア門」と呼ばれます)から腸管や内臓脂肪が外側に押し出される状態が、腹壁瘢痕ヘルニアです。

感染や創部の癒合不全、術前の栄養状態の悪さ、体質的に筋膜が薄い方などが発症リスクを高めます。

 

腹壁瘢痕ヘルニアの症状

立ち上がったときや咳・くしゃみをしたとき、あるいは排便時など腹部に圧力がかかる場面で、お腹の一部がふくらんで見えるのが典型的な症状です。仰向けになって安静にするとふくらみが元に戻ることが多いですが、ヘルニア門の大きさや、突出してくる内容物によって症状のあらわれ方は異なります。

無症状のケースもありますが、腸管が脱出している場合やヘルニア門が狭い場合には、痛みや食後の腹部膨満感といった不快な症状が出やすくなります。

腹壁瘢痕ヘルニアを放置するとどうなる?

症状が進行すると、腰痛や便秘、腹部の張りといった症状が悪化していくことがあります。鼠径ヘルニアに比べて頻度は低いものの、腸管が締めつけられて元に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」のリスクも否定できません。嵌頓が起こると腸閉塞や壊死を招く恐れがあり、早急な外科的処置が必要となります。

もし、ふくらみが大きくなってきた、痛みが出てきた、何となく違和感が続く、というような変化を感じた場合は、早めに当院までご相談ください。

腹壁瘢痕ヘルニアの治し方

腹壁瘢痕ヘルニアは自然に治ることはありません。根本的な治療には、メッシュと呼ばれる人工補強材を用いた手術が必要です。

従来は、開いた穴を直接縫い合わせる方法が一般的でしたが、現在では、腹壁本来の機能をできるだけ保つことを目的として、腹腔鏡による低侵襲な手術法が主流になってきています。ただし、術後の再発率は15〜20%程度とされており、治療後も継続的な経過観察が重要です。

腹壁瘢痕ヘルニアを予防するには?

肥満体型の方や喫煙習慣のある方、慢性的な呼吸器疾患をお持ちの方は、腹壁瘢痕ヘルニアを発症しやすいと言われています。特に、肥満は再発リスクにもつながるため、日頃から体重管理や生活習慣の改善に取り組むことが大切です。